宝石の人生はまだまだこれからなのかもしれません
お祖母様やお母様の手で大切に扱われ、受け継がれた宝石のジュエリーをアムでリフォームして欲しいというご相談をよく頂きます。
私たちは自然が作り出した素材を使ってジュエリーを生み出し、お客様にお届けすることを仕事としているわけですから、どうしてもながく使われたジュエリーよりも、まだ誰にも使われていない新品のジュエリーを見る機会の方が多くなります。
リフォームで送られてきたジュエリーを眺めていると、美しく輝く宝石や、地金についた一つ一つの細かいキズ、ジュエリーが納めされたケース等に新品のジュエリーにはない温もりを感じ、このジュエリーはいつ頃作られどのように使われて、どんな物語を持っているのだろうと興味が湧いてきます。
そして、やはりジュエリーってながく使えるものなのだと思うのです。
そこで、今回はジュエリーの寿命について考えてみました。
ジュエリーを選ぶとき、どんな視点で選びますか?
私はジュエリーには4つの価値があると思います。
- 着けて楽しむことができるという価値
- 眺めて楽しめるという価値
- 想いを込めて伝えることができるという価値
- そして素材としての価値
まずジュエリーとしての最大の魅力といえば使って楽しめるということ。古い遺跡からも装飾品が出土されるように美しいもので身を飾るということは、人の習性なのかもしれません。何より自分の気に入った宝石を常に手元に置いておけるというのは、すごく心が満たされます。
次に眺めて楽しめるという価値。ジュエリーに使われている素材は自然が偶然に産み出したものに人の手を加えて磨き上げたもの。手元にある宝石一つ一つが人類が誕生するはるか昔に生まれ、ながい間地中に埋もれていたことを考えると、ただの美しいもの以上の特別な何かを感じます。
想いを込めて伝えることができるという価値。古くから「REGARD」や「DEAREST」いったセンチメンタルジュエリーがあるように自分の感情を伝える道具として使われているジュエリーですが、それ以外でもながくをジュエリーと過ごした自分の物語とともに娘や孫にジュエリーを受け継ぐということもできるのです。
そしてそれを可能にしているのが、宝石という変わらない存在と、再生可能な地金のもつ素材的な価値だと思うのです。
素材そのものの価格的価値については価格相応となりますためここでは分けて考えますが、普段私たちが日常的に使用していて素材の価値が減らず、また再生可能なものといえば、ジュエリー以外はあまり思い浮かばないのではないでしょうか。
では、ジュエリーの寿命って一体どのくらいなのでしょう。
地中に眠る宝石が掘り起こされてからカットされジュエリーになるまでの期間は一般的に1年から3年と言われています。
人の手で採掘されるまで、何億年もの時間を地中に埋まっていた宝石が、数年でジュエリーになり人の手へと渡っていることを考えると、その寿命が10年や20年で終わるとはとても考えられません。
使う人や時代に合わせて形を変え、大切にされ続けるジュエリーってとても寿命がながく幸せなものだなと感じるのです。
とはいえジュエリーは繊細な作りのものが多いため壊れやすいものです。また宝石によっては耐久性が低く取り扱いが難しいものもあります。手持ちのジュエリーや宝石の特性をよく理解して、大切に扱うことこそ自分の物語と共にお気に入りのジュエリーを誰かに引き継ぐ最初の準備なのかもしれません。