職人の道具図鑑 NO.5
バーナー
火を使った仕事はジュエリー作りに欠かせないもの。硬い地金を曲げて形を作ったり、地金どうしをくっつけたりと、加工の際には必ずこのバーナーの火を使います。各職人の作業机の傍らには個々に備えられており、いつでも使える状態になっているのです。
火を使った作業をするには、地金に対する知識が必要不可欠。地金の融点は何度なのか、火を当てることによって地金の性質がどのように変化し、またそれを生かしてどう加工するのか。職人はこのことをきっちりと理解して仕事を行います。
たとえば、地金を適度な温度に加熱後、徐々に冷まして軟化させる「焼き鈍し」という処理があります。
これを行うことで、地金が加工しやすい柔らかさに変化して思い通りの形を作りやすくするのです。
また地金と地金を接合する「ロウ付け」という工程。接合する地金よりも融点の低い「ロウ」と呼ばれる接着用の地金を溶かし着けて行います。
このロウ材は温度の高い方に流れ、また接合するパーツどうしが同じ温度にならないと接合してくれません。
この時に地金の形や、熱された色をみてバーナーの火をどこに当てればいいのかを判断して職人は仕事を行います。
火を当てる場所や時間を間違えると、せっかくのジュエリーを溶かしてしまいます。
地金の種類によってその融点を見極め、適切な火の当て方をする。ジュエリーの仕上がりを大きく左右するこの工程は、まさに職人の技の見せどころです。
バーナーで真っ赤に熱されたジュエリーをみると神秘的な何かを感じます。加工の上だけではなく、ジュエリーに命を吹き込むためにも火は必要なのかもしれません。
(熱されて赤くなった地金)