職人の道具図鑑 NO.10
糸のこ
ジュエリーの原型作製はまず材料を手配するところから始まります。作る物に対して必要な地金を準備するのですが、大きさや形を整え切り出す道具として出てくるのがこの糸ノコです。画像のように糸のような金属に細かく刃がついており、それをフレームに固定して引っ張っぱります。あとはノコギリのようにスライドさせることで対象を切り出すことができます。
糸ノコフレームには固定式と自在式の2種類があり、自在式は伸縮自在に長さが調節できるようになっています。
一般的な使い方は刃が入るように加工したスリ板の上に地金を置き、固定しながら上下に動かします。この方法はノコ刃をひいた時に切れるため「引き切り」といい、板状の物を切り出したり、透かし模様を入れたりする場合に適しています(右側画像上)。
一方、ノコ刃を逆さに付け、スリ板の先端にあてがうように対象を固定して押して切る「押し切り」をする場合もあります。これは指輪等の小さなものを加工する時に用います(右側画像下)。
どの方法にも言えることなのですが糸ノコの刃は非常に細く、ちょっとした負荷がかかっただけですぐに折れてしまうため、一点のブレもなく真っ直ぐ刃を動かす技術が必要となります。
フレームにセットするノコ刃には、刃の形状や粗さ、太さなど様々な種類があります。ジュエリーの加工では通常0/3番、0番、1番というサイズを使用するのですが、いちばん細かい0/3番では1cmあたりに約23もの刃が並んでおり非常に細かいです。
また、糸ノコはヤスリの刃が入らないような小さな隙間の仕上げに用いる場合もあります。その場合いちばん目の細かい刃を使い削るようにして使います。
このように単純にノコギリといってもその活躍の幅は広く、極めればどんな細かな形にも切り出すことができる職人の道具なのです。
(糸ノコとノコ刃、すり粉を集める道具たち)