職人の道具図鑑 NO.3
金床
職人の仕事場には作業机の傍らに、いつも立派な金床(かなとこ)があります。直径30cm、高さ1m程のどっしりとした木台に打ち込んで固定された金床は、主に地金を鍛えたり、叩いて形を整えるのに使われます。
私が初めて工房に足を踏み入れた時、真っ先に目に飛び込んできた道具がこの金床でした。
普段見慣れない形で、とても大きく存在感があり、この道具をみて工房っぽいなと感じたのを憶えています。
原型を作製したり、手作りでジュエリーを作る場合、板や線の状態の地金から形を作って行きます。
真っ赤に熱し、なました地金を金床の上でハンマーを使い、叩きながら伸ばして鍛えていく。
この作業を何度も何度も繰り返して、芯の強いジュエリーが仕上がるのです。
また、金床の周りの木台も加工につかわれます。
例えば、くぼみに地金を当ててタガネをつかって形を作ったり、サイズを合わせる際の芯金の支えにするなど、力が加わる仕事の支えとして、とても頼もしい存在です。
金床の表面は、脇に置かれた目の細かい紙やすりで毎日毎日磨かれ、綺麗な状態が保たれています。
道具の状態を常に最高にしておくのも職人の大事な仕事のひとつ。
よいジュエリーが仕上がるように、道具の管理は職人仕事の中で真っ先に教わる、基本中の基本なのです。
(金床の周りには色々な種類の槌が備えられています)