umu -アム- FINE JUEWELRY STUIDIO

職人の道具図鑑 NO.4

やすり

様々な種類のやすりを使い分け、地金の形を整えてゆく
削っては見つめ、理想の形に近づくまで繊細な仕事は続きます

毎日の仕事で職人が一番長い時間手にする道具、それがこの「やすり」です。ジュエリーの形を整えるのに、この道具無くしては語れない、職人の命とも言える道具です。修行をはじめた時から何年もかけてやすりの技術を磨き一人前の職人になります。

右側上の写真のやすりは、目の粗さを比べたものです。右から荒目、中目、油目。荒目で大きく形を整えていき、最も目の細かい油目で最終仕上げを行うイメージです。

形を整える箇所や大きさによっても様々な形状のやすりがあります。

基本の「平やすり」、指輪の内側のアールをやする「腹丸やすり」、鋭角な部分を削る「鎬やすり」、小さいパーツを整える「精密やすり」。

職人の道具箱には何十本ものやすりがあり、それぞれを巧みに使い分け、美しいジュエリーを仕上げて行くのです。

やすりがけは形あるものを削って整えていく仕事。一度削った形は元に戻すことが出来ないため、一瞬たりとも気を抜くことができません。

ジュエリーを削ってはじっくりと見つめ、また削ってはじっくりと見つめ、理想の形に近づくまではひたすらこの仕事をくりかえします。

熟練の職人に技術向上の秘訣を聞いてみると「目を養う」ことという意外な答えが返ってきました。

正しい形を作るには、正しい形を判断できる確かな目が必要。修正する部分を正確に見抜き、その部分に正しくやすりをかけることで理想の形を作り上げていくのだそうです。

私たちが普段目にしているジュエリーも、職人の目には違った映りかたをしていて、見えている世界が違うのだろうなと驚かされました。

(荒目やすりと削られた地金の粉)