職人の道具図鑑 NO.2
やっとこ
細かい作業が要求されるとき、実はとても重要なのが小さなパーツをしっかり掴む力です。例えば宝石がセットされる石枠を指でつまんで、道具を使って力いっぱい加工する。指の力だけではとても支えきれません。
そんな時に、自分の指のようにパーツを支えててくれるのが「やっとこ」なのです。
またあるときは、地金を曲げて加工したりもします。
「やっとこ」の物を強く挟む力はとても強く、思い通りの地金の加工もできてしまいます。
力にまかせた作業だけではありません。「飴を留めてるみたいに難しい。」と職人がこぼすこともあるエメラルドをはじめ、宝石の石留めも、この道具を優しく使っておこなっています。
細かい仕事を行う(口細)、口先が平たく角ばった(平口)、線材を仕上げるのに適した円錐状の(丸やっとこ)、石留めを行う(石留めやっとこ)など、用途によってたくさんの種類のやっとこがあります。
職人はこれらを巧みに使い分けて、1本のジュエリーを作っていくのです。
作業机の傍らには常にこの道具が置かれているほど、職人にとっては欠かせない身近な道具です。
この「やっとこ」も職人自ら口先を加工して、作業をしやすいように形をつくります。自分の手に馴染むように、意思がしっかりと伝わるように。
ひとつひとつ表情の違う、立派な「やっとこ」が今日も工房で活躍しています。
(用途によって形の違う口先)