宝石の弱点を知ろう
宝石の苦手なことってどんなこと??
「宝石の弱点を知ろう」と書かれた看板写真に写っている、宝石がぎっしりと詰まった瓶は工房にある社長の作業机の片隅にあります。
一見するとたくさんの色を集めた綺麗な置物ですが、中に入った一粒一粒の宝石を見てみるとある特徴に気づきます。実はこの瓶に詰められた宝石は、すべて割れたり欠けたりしてしまいジュエリーに使えない宝石達なのです。
職人にとって石留めはとても難しく、経験と技術が必要な仕事。駆け出しの職人は硬度が高く、価格が安い宝石から石留めの仕事を覚えていきます。
どのくらい力を入れれば宝石が割れてしまうのか、また宝石にどのような性質や弱点があるのかを正確に把握した一人前の職人にしか、高価な宝石の石留めは任せることができません。特にお客様からの預かり石を割ってしまったなどということは絶対に許されないのです。
しかしどんな優秀な職人も下積み時代には石を割ります。そうして経験を積むことで一人前の職人へと成長するのです。
瓶の中には仕入れた際にもともと欠けてしまっていた宝石もありますが、工房がスタートして30年以上もの間、宝石の特性を掴むために修行をした職人たちの歴史でもあるのです。
さて、宝石がセットされたジュエリーは皆さまの元へと辿り着きます。縁があり出会った宝石をいつまでも美しく輝かせるために、各宝石の苦手なことを知り、それぞれに適したお手入れを行うことが大切になります。
まずは、各宝石の弱点を下の表で確認してみましょう。
宝石の弱点一覧
衝撃 | 汗・脂肪 | 化粧品類 | 整髪料 | 除光液 | 塩素系洗剤 | 温泉 | 紫外線 | 超音波洗浄器 | |
ダイヤモンド | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ルビー | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
サファイア | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
アレキサンドライト | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
クリソベリル・キャッツアイ | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
スピネル | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
トパーズ | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
アクアマリン | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
エメラルド | × | ◯ | ◯ | △ | × | ◯ | △ | ◯ | × |
ジルコン | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ |
トルマリン | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ガーネット | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
アメシスト | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ |
シトリン | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | ◯ |
めのう | × | ◯ | ◯ | ◯ | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ペリドット | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
クンツァイト | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | × |
ジェイダイト | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
ネフライト | △ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | △ |
タンザナイト | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
ムーンストーン | × | ◯ | ◯ | ◯ | △ | △ | ◯ | ◯ | × |
マラカイト | × | △ | ◯ | △ | × | × | × | ◯ | △ |
トルコ石 | × | △ | △ | × | × | × | × | × | × |
ラピスラズリ | × | △ | △ | △ | × | × | × | △ | △ |
オパール | × | ◯ | ◯ | △ | △ | △ | △ | ◯ | × |
さんご | × | △ | △ | × | × | × | × | ◯ | × |
真珠 | × | △ | △ | × | × | × | × | × | × |
琥珀 | × | △ | ◯ | △ | × | × | × | ◯ | × |
◯:安全△:できるだけ避ける×:避ける |
硬度の低い宝石
硬度の低い宝石はとても傷つきやすいため、取り扱いに注意が必要です。特にそれ以上の硬度を持った宝石と触れ合えば容易に欠けたりしてしまうため、柔らかい布などに包んで個別に保管するのが原則です。
衝撃
どの宝石でも基本的に衝撃はさけなければなりませんが、特に劈開の性質がある宝石については、一定方向に割れやすいため注意が必要です。
紫外線
紫外線に弱い宝石は、紫外線に長時間さらされると退色や変色の恐れがあります。日光が当たる場所や強い照明下に放置することは避けましょう。
熱
どのような宝石も高熱は避けるべきですが、とくにエメラルドやオパール、トルコ石等は熱による乾燥に弱いため、熱湯や暖房器具などの日常の高温に注意を払う必要があります。
水分
トルコ石などの有機質の宝石は水分を吸収しやすい性質のため洗剤などの使用は変色の原因にもなります。保管の際には柔らかい布で汚れを落とすことをおすすめします。
酸・アルカリ
有機質の素材はこれらの影響を受けやすく、汗や化粧品などからもダメージを受けがちです。使用したらすぐに汚れを拭き取って保管することを心がけましょう。これらの素材は温泉にもとびきり弱いので注意が必要です。
宝石はとてもデリケートで苦手なものも多いですが、それぞれに適した扱いを心がければいつまでも美しい輝きを保つことができ、人生をともにすることができます。
手元の宝石をもっともっと好きになれるように、それぞれの宝石の性質や特徴を把握しましょう。