ジュエリーという一つのものを生み出すために、何年もかけて技術を磨きつづける職人がいます。何千、何万と素材を形にし命を吹き込んできたその手からは、今日もまた新しいジュエリーが生まれ、身に着ける人の感情をゆり動かすのです。
この「ジュエリーが生まれるまで」のコンテンツではアムのジュエリーが生まれるまでをご紹介致します。普段あまり見ることのできない、工房の裏側をどうかご覧くださいませ。
キャスト(鋳造)でジュエリーを地金にします。
アムのジュエリーはすべてキャスト(鋳造)で地金を入れ、1点1点丁寧に人の手で仕上げをしております。数々の工程を経て作られた鋳型に命を吹き込むためには、想像もつかないほどの高温を制さなければなりません。
高温で変化する地金の性質を見極めるためには、長い間の試行錯誤と築き上げてきた経験が必要です。
刻一刻と形を変える貴金属から一時も目を離さず、絶妙のタイミングで地金を流し込むのです。
【電気炉による焼成】
キャストを行う日は、朝一の電気炉の焼成の準備から始まります。
焼成とは前日に乾燥させておいた鋳型を電気炉に入れ、高温で熱しキャストができる状態までもっていくことを言います。
この時、脱ろうも同時に行います。高温で熱することで、鋳枠内に埋没したワックスを流出させながら焼き切り、鋳型に空洞を作ります。
この空洞が溶かした地金の通り道となり、ジュエリーの形となるのです。
電気炉の温度は急激に上げてしまうと鋳型に亀裂が入り鋳型割れの原因となってしまうため、時間をかけて徐々に上げていきます。
電気炉の温度はK18のキャストの時点でおおよそ700℃、PT900のキャストでは900℃を目安としていますが、湿度や環境によって微調整が必要です。
この調整は何度も何度もキャストを重ねて検証、改善することで培われた職人の技術。
上手に焼成できた鋳型はキャストの吹き上がりが違います。
地金が入りやすいように、高温を制しながら最高の状態の鋳型にもって行く技術が求められるのがこの工程です。
【キャスト(鋳造)】
焼成した鋳型に鋳造機で溶かした地金を流し込みます。
アムでは遠心力で地金を流しこむタイプ(主にPT900、K18WG)と、圧力をかけて地金を流しこむタイプ(それ以外の地金)の2種類の鋳造機を使い分けてキャストを行っております。
手順としては焼成された鋳型を電気炉からとりだし、すみやかに鋳造機にセットします。
前日の埋没時に測ったツリーの重さから割り出した必要な地金を坩堝にセットし、鋳造機の蓋をした後加熱します。
地金が徐々に赤くなり溶けだすと、坩堝の中で赤くつるつるした球状になるので、頃合いを見計らって、鋳型の中に流し込みます。
このときに地金が鋳型の空洞の隅々まで行き渡るように圧力、もしくは遠心力を使います。
ちなみに地金の融点はプラチナで約1700℃、金で約1000℃となり融点に近づくと非常に赤く光り出します。特にプラチナは肉眼で直視できないほど明るくなるのです。
最後に鋳型を水につけ急冷し埋没材から地金を取り出します。
キャストの工程で一番大事なことは、溶かした地金を流し込むタイミングを見極めること。
高温で常に変化する地金から一時も目を離さず、何年もかけて培った職人の経験が吹き上がりの良し悪しを決めるのです。
【酸洗い】
鋳型から取り出した地金(K18)は表面に酸化膜がはられており、黒く焦げたような色をしています。
この酸化膜を水で薄めた硫酸を沸騰させてものに漬け、煮ることで取り除きます。
酸化膜のとれたツリーは酸洗いをする前の地金からは想像もつかないほど、綺麗なクリーム色をしているのです。
あとは水洗いで硫酸を綺麗に洗い流し、洗浄機にかけ乾燥させます。
ここまでがキャストの一連の流れとなります。